ふるさとは淡い緑につつまれていました。親子三世代の里帰り。
5月11日(土)、遊働楽舎 “みちくさ”の9時の気温は24℃。松木の郷は朝から青空が広がり、臼沢の森には“龍”が地上に降りてきたかのような雲が立ち上っています。
多くの訪問者を期待し、オープン準備をしました。
ジャンダルムを目指すクライマーやハイカーが“みちくさ”の前を通過していきます。帰りに寄ってくださいと声をかけて見送ります。
橋倉さんが放射線量の計測から戻り、コーヒーを飲みながら打ち合わせを行いました。
「足尾まるごと井戸端」の山田功さんが、足尾出身の3世代を松木に案内し、“みちくさ”に立ち寄ってくれるということで、楽しみに待ちました。
11時過ぎに松木渓谷から戻った山田さんが“みちくさ”に到着。親子三世代のご家族を案内してくれました。お茶を飲みながらお話をうかがうと、昭和20年代、中野さん(86歳)のお父さんが足尾銅山の坑内で働き、幼少期を足尾で過ごしたころの思い出を話してくれました。
現在は深刻な過疎の足尾ですが、当時は数万人が住む足尾で子供も多く、ラジオ体操も2回に分けて参加したり、小・中学校が本山、通洞、小滝に3つ有り、小滝のグランドで鼓笛隊の応援の下、中学校対抗陸上大会を開催したりと楽しかった頃のお話をうかがいました。医療や安全衛生に携わる娘さんからは、「安全第一」が主流の現在、「安全專一(あんぜんせんいち)」という労働安全衛生のさきがけをつくったのが足尾銅山だったことを学んだことが話されました。祖母と祖父の青春、家族のルーツが足尾にあったこと、家族の歴史を知る旅を通じて絆がより深まることを感じるお孫さんの様子は「負の歴史」で語られることの多い足尾銅山ですが、明るく、たくましく生きてきた祖父母の姿を通じて未来への希望が受け継がれていると感じました。
次回来られる際は、荒廃した足尾の山に蘇りつつある森を案内させていただきますのでお声掛けをお願いします。
次に訪問してくれたのは、オープン準備をしていた時に「松木村はどこですか?」と尋ねてくれた宇都宮市の小島さん73歳。初めて松木を訪れた小島さんは「足尾銅山は有名ですが来るのは初めてです。歴史を学びに来ました。」と探求心を持って松木渓谷を散策されました。渓谷入り口の高台にある「上の墓地」に気づき、手を合わせて下さったそうです。私たちは春秋の彼岸、お盆に掃除をして花を手向けていますが、私たちの活動を見守ってくださっている松木村民に心を寄せていただきありがとうございました。
次の訪問者は、矢板から来られた男性。「山登りの鉄人」のような方です。今日は阿蘇沢から日光側の黒檜岳を登り、シゲ山を越えて尾根伝いに小足沢を下り松木川に降りたそうです。「9時間歩きました。疲れたー」と、“みちくさ”でコーヒーを飲んで一息ついていただきました。にごり沢のペットボトルの小屋にも泊まったことがあり、皇海山など足尾の山々を登った話もうかがい、久しぶりの足尾の山だったようです。またのお越しをお待ちしています。
ロープを背負ったクライマーの皆さんも数組通過していきました。淡い緑に包まれた松木の森が微笑んでいるような1日でした。
咲き始めたハルジオン(春紫苑)にはシジミチョウやハナムグリ、小さな虫たちが集まっています。自然の恵みを分かち合っているようです。
「みちくさの庭」の野イチゴは小さな実が鈴なりです。木々が生長した森から流れる水は草花の生長を助けます。真っ赤に熟した甘いイチゴ、森の恵みを頂ける日が楽しみです。
多くの出会いのあった“みちくさ”舎人日となりました。「コーヒーはいかがですか」皆さまの訪問をお待ちしています。本日の舎人は橋倉喜一、清水 卓でした。
(報告:清水 卓)
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